メニュー

高血圧症

高血圧症は、いわゆる生活習慣病の1つで、現在日本に2~3千万人いると言われており、国民病と言えます。高血圧が長期にわたって続くと、いわゆる「血管病」、中でも動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞などを突然起こしますが、他の生活習慣病である糖尿病や高脂血症と同様、通常は症状に乏しく、放置されやすい病気です。ここでは、高血圧症についてどのような病気か、どのように治療するかについて説明したいと思います。

 

血圧とは

血液は、人間が生命を維持していくために不可欠な酸素や栄養を体の各部分に運搬し、老廃物と炭酸ガスを運び去る役割を果たしています。血圧とは、心臓から送り出された血液が動脈の内壁を押す力のことです。心臓は、収縮と拡張を繰り返して血液を送り出しているので、動脈の中の血圧は心臓の収縮、拡張に応じて上がったり下がったりします。動脈内の圧力が心臓の収縮中に最高に達したときの値が「収縮期血圧」、いわゆる最高血圧(上の血圧)であり、心臓の拡張中に最低に達したときの値が「拡張期血圧」、いわゆる最低血圧(下の血圧)です。

 

高血圧とは

高血圧症とは、医療機関においてくり返して血圧を測っても、最高血圧が140mmHg以上、あるいは最低血圧が90mmHg以上である状態と定義されます。

高血圧症には、大きく2つのタイプがあります。

本態性高血圧症

原因の特定できない高血圧症で、高血圧症患者さんの90~95%がこの範疇に入ります。遺伝的因子と生活習慣(環境因子)が複雑に絡み合って発病すると考えられています。本態性高血圧症は生活習慣病の代表といってもよい病気です。本態性高血圧症の発症に関与する悪い生活習慣としては、塩分過多、肥満、運動不足、過度の飲酒、喫煙、ストレス、自立神経の調節異常、肉体労働の過剰、蛋白質・脂質の不適切な摂取などがあります。

二次性高血圧症

二次性高血圧症とは、他の病気に伴って起こる原因が明らかな高血圧症です。高血圧症患者さんの5~10%がこの範疇に入ります。二次性高血圧症の原因としては腎臓、内分泌、心血管、神経の病気、睡眠時無呼吸症候群、妊娠中毒症などがあります。

 

なぜ高血圧症が悪いのか

高血圧症は、血圧が高いだけでは、ほとんど症状はおきません。しかし高血圧が続くと、全身の血管で血管の壁を硬くすることにより動脈硬化を引き起こし、さまざまな障害を誘発します。また、動脈硬化は高血圧を一層悪くし、悪くなると動脈硬化がより進むという悪循環ができ上がります。そして、脳では脳卒中(脳梗塞や脳出血)を、心臓では虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)、心臓肥大、心不全などが、腎臓では腎臓の機能の低下をおこし腎不全を、目では出血が起きて最悪の場合失明することがあります。このように、高血圧症はいろいろな臓器の障害を引き起こし、病気の元になり得るのです。

どのように治療するのか

高血圧症の治療には、①生活習慣の改善、②薬物治療があります。

 

生活習慣をどのように改善するのか

日本高血圧学会の新しいガイドラインでは、①食塩制限、②野菜・果物の摂取、コレステロールや飽和脂肪酸(動物性脂肪)の制限、③減量(肥満の是正)、④運動、⑤アルコール制限、⑥禁煙の6つが基本とされています。

  1. 日本人の食塩摂取量は平均して1日約12gと言われており、まだまだ多いです。食塩制限の目標は1日6g未満を目標としましょう。個人差がありますが、1g減らすごとに約1 mmHgの血圧低下が期待できます。
  2. 野菜、果物に含まれるカリウムを多くとることにより、3~4 mmHgの血圧低下が期待できます。
  3. 1 kg減量するとあたり1~2 mmHgの血圧低下が期待できます。BMI(体重(kg)÷身長(m)2)を25未満にすることを目標としましょう。
  4. 運動をきちんと続ければ5~10 mmHgの低下が期待できます。毎日30分以上の有酸素運動を行うことを目標としましょう。
  5. アルコール摂取量は適量にとどめておくことが大切です。具体的には1日あたりビール500mlまで、日本酒・ワインでは1合以下までにとどめておきましょう。
  6. たばこを1本吸うたびに血圧は10~20 mmHg上がると言われています。従って、高血圧でたばこを吸っている方は、禁煙がとても重要です。

 

治療薬にはどのようなものがあるのか

降圧薬による治療が血管や心臓を守り、予後を改善することは明らかです。副作用が怖いとか、ずっと飲まなければいけないからいやだ、という方がいらっしゃいますが、薬を服用せずに放っておくほうがもっと危険です。降圧薬には多くの種類があり、汎用されているのは「カルシウム(Ca)拮抗薬」「アンジオテンシン変換酵素阻害薬」「アンジオテンシンII受容体拮抗薬」「利尿薬」「ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬」「ベータ遮断薬」「アルファ遮断薬」の7つのグループです。他に、中枢神経に作用する中枢性交感神経抑制薬や、血管拡張薬が用いられる場合もあります。副作用や、何か異常のある時は主治医に相談して下さい。

 

治療の目標は

治療における血圧の目標値は、一般成人の場合130/80mmHg未満高齢者の場合140/90mmHg未満です。糖尿病、腎臓病、脳卒中、虚血性心疾患の方の目標値は、130/80mmHg未満です。家庭血圧の降圧目標値はさらに低く設定され、それぞれ5mmHgずつ低い値に設定されています。

 

家庭血圧の測定について

従来、高血圧の診断や治療効果の評価は、病院や診療所で測定された診察室での血圧に基づいて行われてきました。しかし、心血管イベントを起こさないためには24時間の厳格な血圧コントロールが重要であり、月1回程度の診察室での血圧ばかりでなく、毎日の家庭血圧を含めた評価が大切であると明らかになってきました。そもそも血圧は一定ではなく、日常の身体活動や精神活動で血圧は当然変動しますが、約24時間周期で日内変動を有することが知られています。多くの例で睡眠中には血圧は低下し活動時には上昇し、これには自律神経が関与しています。その他、季節での変動(寒くなると上昇する)や年齢での変動(加齢とともに上昇する)もあります。当たり前のようにみえる血圧の日内変動ですが、この変動が消失したり、逆に夜間から早朝の血圧が異常に高い場合があり、この場合心血管疾患の発症が高いことが知られています。そのほかにも白衣高血圧(病院で血圧を測定すると、緊張し血圧が高いものの普段は正常血圧の人)の診断などにも有用です。すなわち、家庭血圧は、このような診察室ではわからない情報を教えてくれます。実際の家庭血圧の測定は、上腕用の血圧計を使用して朝と晩の2回行います。指用や手首用の血圧計は不正確になることが多いのでお奨めできません。朝は起床1時間以内、排尿後、座位1-2分後の安静後、降圧薬服用前、朝食前に、また晩は就床前、座位1-2分の安静後に測定することが推奨されています。ただし、前にも述べた様に血圧は随時変動します。一回の測定値に一喜一憂することなく気楽につきあうことが大切です。

 

当院での治療

当院では、患者さんのライフスタイルに合わせたアドバイスを心がけ、また個々の患者さんに応じて治療方法、治療薬を選択し、安定した血圧コントロールを目指していきます。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME