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脂質異常症

かつての日本人には脂質異常症はさほど多くみられませんでしたが、現在は年々ふえ続けています。その理由のひとつとしては、魚類・穀類・野菜を中心とした食生活が、次第に高タンパク・高脂肪・高カロリーの欧米式食事へと変わってきたことによります。もうひとつの理由は、ライフスタイルの変化です、日常生活で身体を動かす機会が減り、運動不足になる人もふえてきました。ここでは、脂質異常症についてどのような病気か、どのように治療するかについて説明したいと思います。

 

脂質異常症とは

通常、脂質は、肝臓で作られたり食事からとり込まれたりして、血液中に一定の量が保たれるように調節されています。そして、細胞膜やホルモンの材料となり、エネルギーの貯蔵庫になるなど大切な働きをしています。しかし、体の中で脂質の代謝がうまく調節できなくなったり、食事から体の中に過剰に脂質が入ってきて生じ、血液中のLDLコレステロールやトリグリセライド(中性脂肪)が多すぎる、あるいはHDLコレステロールが少なくなると、血管の動脈硬化を起こし、心筋梗塞や脳卒中の一因となります。この血液中のLDLコレステロールやトリグリセライド(中性脂肪)が多すぎる状態、あるいはHDLコレステロールが少なくなる状態を脂質異常症と言います。具体的には、以下の基準で判断されます。

分類 基準
高LDLコレステロール血症 LDL-Cho ≧140
境界域高コレステロール血症 LDL-Cho 120≦ <140
高トリグリセライド血症(中性脂肪) TG ≧150
低HDLコレステロール血症 HDL-Cho <40

 

脂質異常症の原因

遺伝的な要素、過食、脂肪の多い食生活、運動不足、ストレスなどが関係しています。特に近年、国内で脂質異常症の患者が増えた背景には、動物性脂肪の多い食事が増えたこと、車の普及などによって慢性的な運動不足の状態にあることなどが関わっているといわれています。コレステロール値が高くなる原因としては脂肪の多い肉や卵、乳脂肪分の多いバター、チーズ、即席麺などの食べ過ぎが挙げられます。中性脂肪値が上がる原因となるのは、果物や甘いお菓子の食べ過ぎ、お酒の飲み過ぎなどです。またタバコを吸うと善玉コレステロール値が低くなり、脂質異常の状態になりやすいことも判明しています。さらに運動を怠ると体内で消費されるエネルギーが減り、ますます脂質の代謝が悪化してしまいます。大半の脂質異常症は成人以降の食生活、運動不足、体重増加などが原因となって起こるといわれています。

 

脂質異常症の症状

脂質異常症から起こる自覚症状はほぼ皆無で、ほとんどの場合は定期検診などで数値の異常を指摘されて初めて判明します。脂質異常症からの動脈硬化が「沈黙の病気」といわれるのはそのためです。脂質異常症には他の病気に付随して発症する続発性のものがあり、例えば甲状腺機能低下症、副腎皮質ホルモンの分泌異常、糖尿病、腎臓病、肝臓病などが挙げられます。このような病気に伴って発症する場合には、各病気の症状がきっかけとなって判明するケースもあります。

 

脂質異常症の怖い点

このように脂質異常症は無症状のことが多く、医師から「生活を見直しましょう。お薬を飲みましょう。」と言われても、調子が悪いわけではないのでぴんとこない方もいらっしゃるかもしれません。しかし、脂質異常を治療しないで放置すると、脂質(あぶら)は血液にのって全身をめぐり、特に問題となるのが血管壁に脂質が沈着し、動脈硬化を引き起こし、血管が硬く狭くなり、重篤になると閉塞しています。これが脳の血管に起こると脳梗塞を、心臓の血管に起こると狭心症、心筋梗塞を、足の血管に起こると閉塞性動脈硬化症を引き起こし、日常生活レベルの低下を来したり、時には生命の危機に陥ってしまいます。

 

脂質異常症の治療

脂質異常症の治療は、大きく分けて①食事療法②運動療法③薬物療法、の3つが挙げられます。

食事療法

脂質異常症のほとんどは生活習慣に関連した原因が重なって発症します。遺伝的な素因のほかに、過食、高脂肪食、運動不足などの悪い生活習慣や、それによる肥満があげられます。つまり、食事にからんだ要因がいちばん多く、まず、食事に気を配って食生活を適正に保つことが重要です。

  1. 偏りなく栄養バランスのよい食事を心がけましょう。
  2. 摂取総エネルギー量を抑えて、適正な体重を保ちましょう。
  3. 飽和脂肪酸(おもに獣肉類の脂肪)1に対して不飽和脂肪酸(おもに植物性脂 肪や魚の脂)を1.5~2の割合でとりましょう。
  4. ビタミンやミネラル、食物繊維もしっかり取りましょう。
  5. コレステロールが高い人はコレステロールを多く含む食品を控えましょう
  6. 中性脂肪が高い人は、炭水化物、砂糖や果物などの糖質とお酒を減らしましょう。
  7. 禁煙を心がけましょう。たばこに含まれるニコチンは、交感神経を刺激し、中性脂肪の原料となる 血液中の遊離脂肪酸を増やす作用があります。さらに、たばこの成分により 血液中のコレステロールが酸化されて酸化LDLとなり、粥状動脈硬化が進行します。
運動療法

食事とならんで重要なのが運動です。運動は過剰なエネルギーを消費し、脂肪分が皮下や内臓に蓄積されるのを防ぎ、血行を促して血管の弾力を改善し血圧を下げ、体内での脂肪分解酵素の一つであるリパーゼを活性化させ、LDLコレステロールを減らしてHDLコレステロールを増やします。運動の中でも酸素をたくさん消費しながら行う、いわゆる有酸素運動が効果的です。楽しくて、長く続けられる運動を選ぶことが重要です。誰にでも勧められるのは、ウォーキングです。できれば毎日続けましょう。それが無理ならば、はじめは1日おきでも、1週間に2日か3日でもかまいません。運動時間が短くては効果がないなどと考えずに、からだを動かすことを楽しんで、運動を習慣にして下さい。

薬物療法

食事療法、運動療法でも目標値に達しなければ、薬物療法の適応となります。薬物治療の目的は、単にコレステロール、中性脂肪を下げることではありません。その先の合併症である心筋梗塞や脳梗塞の発症を抑えたり、再発を予防することにあります。従って、薬はきちんと服用する様にしましょう。

 

当院での治療

当院では、患者さんのライフスタイルに合わせたアドバイスを心がけ、また個々の患者さんに応じて治療方法、治療薬を選択します。薬で副作用が起こった場合にも、適切に対応します。

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